「パッシブデザイン」という言葉を聞いたことはありますか?
パッシブデザインの家とは、光や風の力を活用して一年中快適な住空間を作ろうとする、究極の省エネ住宅といえます。
パッシブデザインとは
太陽光発電や省エネ家電を取り入れたエコ住宅は数々ありますが、これらエコ住宅は自然のエネルギーを「能動的に」活用するために「人工的な設備」を必要とします。
一方、パッシブデザインは、人工的な設備に頼らずに、自然の力をそのまま「受動的に」取り入れて快適な室内環境作ろうとするものです。
現在、壁の温度などは赤外線レーザーで一瞬にして測定することができ、その快適さを数字で表すことも可能です。
光と風をうまくコントロールすることで、エアコンがなくても、夏は涼しく、冬は暖かく、年中風通しも日当たりも良いという快適な家を実現。
パッシブデザインの家は、まさに「究極の省エネ住宅」といえます。
ただヨーロッパではスタンダードですが、日本ではまだ0.01%の普及率といわれており、手掛けたことがない業者が圧倒的に多いです。
そのためパッシブデザインを検討される際には、パッシブデザイン住宅を手掛けた経験のある業者を選ぶことが重要となってきます。
本当に快適な家 パッシブデザインの特徴
【パッシブデザインの特徴】
- 断熱性を高める
- 気密性を高める
- 夏の太陽光は防いで、冬の太陽光は取り入れる
- 風通しが良くなるように窓の設計をする
中でも特に重要なのが「断熱性」と「気密性」です。
パッシブ(passive)とは「受動的」という意味があります。
つまり自然の力をできるだけ「受けて」利用するのが、パッシブデザインの基本の考え方です。
一般的にリフォームやリノベーションをしようとすると「機能性」や「デザイン性」には興味を持ちますが、「快適さ」には興味が薄くなりがちです。
しかし、これは大変もったいないです!
現在では、高いデザイン性を確保しながら、快適さも同時に達成する技術が色々あります。
また2020年には全ての新築住宅が、省エネ基準を義務化されることになっています。
快適に暮らすために、そして家の資産価値を下げないためにも、リフォームでパッシブデザインを取り入れることは大きなメリットがあります。
2020年に義務化される省エネ基準とは
2020年に義務化される省エネ基準のベースは、平成25年(2013年)の省エネ基準です。
1次エネルギー消費量の導入
1次エネルギー消費量とは(※)、省エネ法で建築設備として認められている設備が消費するエネルギーのことです。
以前は建物の断熱性のみを評価していましたが、平成25年基準より、この1次エネルギーの消費量が判断材料として加わり、「建物全体」の省エネルギー性を評価する方式と変わりました。
つまり家のつくりだけでなく、家の中で使う設備が省エネタイプかどうかも判断基準に関わるようになったということです。
ここでいう設備とは、具体的には
- 冷暖房
- 換気
- 照明
- 給湯
のことで、それぞれ一定以上の省エネルギー性能の機器を使っているかどうかが、判定要素に組み込まれるようになりました。
また省エネ法の建築基準ではありませんが、太陽光発電などの設置による自家消費については、積極的に評価されます。
1次エネルギーとは、原子力燃料・化石燃料・水力・太陽など「自然から得れるエネルギー」のことです。
2次エネルギーとは、電気など、1次エネルギーを変換または加工して得られるエネルギーのことです。
1次エネルギー消費量の評価は等級 1〜5に分けられ、2020年以降はすべての新築住宅が等級4をクリアする必要があります。
厳しくなる断熱性能に関する基準
平成25年基準から、住宅(建物自体)の断熱性能の指標も変更になりました。
以前は「熱損失量」(熱の逃げやすさを表す値)によって、必要となるエネルギー量を評価していました。
それが「外皮」と呼ばれる建物の外側部分(屋根・天井・外壁・床・窓など、家の要素のうち、外気と触れ室内との境界になるもの全てを指します)の断熱性を評価するものへと変わっています。
これに伴い、断熱性のレベルは、かつて「省エネルギー対策等級」で示されていたのが、「断熱等性能等級」へと変更になりました。
平成11年基準で定められた最高レベルの「省エネルギー対策等級」4は、平成25年基準では外皮の性能指標を1部変更した「断熱等性能等級」4に再定義されています。
地域区分の変更
地域によって気候は異なり、冷暖房等にかかるエネルギー量にも差があるため、住宅の省エネ性を割り出すにあたり、国は地域別の判断基準を定めています。
平成25年基準からは、評価要素として一次エネルギー消費量が加わったことに伴い、気象条件に見合った適切な評価するため、これまで全国を6地域に区分していたのが、8つに細分化されました。
「低炭素住宅」基準の役割
2012年12月に施行された「都市の低炭素化の促進に関する法律(エコまち法)」により、「低炭素住宅」が導入されました。
エコまち法は、東日本大震災をきっかけとし、特に多くのCO2が排出される地域での低炭素化を促すために制定された制度です。
- 1次エネルギー消費量が、省エネ基準よりもマイナス10%以上になっている
- 省エネ基準と同等以上の断熱性能が確保されている
などの要件を全て満たすと低炭素住宅として認定され、税金やローン金利の優遇措置を受けることができます。
2030年には省エネ基準はさらなる高基準に
2030年には「トップランナー基準」のさらに上をいくものが義務化される見通しです。
トップランナーとは、平成25年基準の等級4をも上回る厳しい基準のことを指します。
国は低炭素社会に向けて「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH/ゼッチ)」を掲げ、これを2020年までに標準的な住宅にし、2030年までに新築住宅の平均でZEHを達成すると言う目標を定めています。
ZEHとは、消費エネルギーがおおむね0になる住宅のことです。
生活する人間がいる限り、エネルギーを全く消費しない家というのは存在しませんが、消費したエネルギーを建物で発生させたエネルギーによって相殺することで「0」を目指します。
自然の力を取り入れ、高い断熱性、気密性を基本とするパッシブデザインは、まさに新基準のコンセプトに合致した方法です。
こうした点から、パッシブデザインが不可欠な時代がやってくると予測されます。
パッシブデザインは高いんでしょ?
究極の省エネ住宅とお伝えすると、高そうなイメージをもたれるかもしれませんが、実はパッシブデザインの家はそれほどコストがかかりません。
確かに、断熱材などにはそれなりの初期費用はかかりますが、その後の光熱費の差額で十分に元が取れます。
たとえば床面積40坪程度の箱形で、断熱気密性能が非常に高い家ならば、6畳用のエアコン1台で家全体をカバーできます。
また自然の光を室内に上手に取り込むことで部屋が明るくなり、照明をつける時間を少なくすることもできます。
家庭のエネルギー消費量の中で、暖房や照明の占める割合は高めです。
自分の家で使う電気のほかに、毎月 約20,000円分の電気エネルギーを余分に作ることも可能なパッシブデザインの家も既に誕生しています。
さらに断熱性能などの省エネ基準をクリアすることで
- 住宅ローン控除における優遇
- 住宅ローン金利の優遇
- 固定資産税の優遇
など得られるメリットもあります。
つまりパッシブデザインは家計に優しく、コストパフォーマンスも高いといえます。
ただ快適に暮らせるだけでなく、10年、20年と住み続けているうちに金額面でも得するようになり、大きな差がつくわけです。
気密性が高いと、ニオイがこもりやすいのでは?
「気密性が高い家だと、ニオイがこもりやすいのでは?」と心配される方もいると思いますが、実は家の気密性が不十分な方が、逆にニオイはこもるんです。
気密性が低い家は、どこからともなく常に隙間風が吹いている状態にあるにもかかわらず、換気量が不足しやすいため、部屋の空気を一新することができません。
すると当然、生活から出るニオイや、湿気がこもりがちになります。
換気というと、窓や扉を開け閉めするイメージがあると思いますが、特に何もしなくても換気がなされる場合があり、これを「自然換気」と呼びます。
自然換気は、屋外の風による圧力差や、室内の温度差によって生じます。
雨の日や梅雨のじめじめした季節には、ほとんど自然換気は起こりません。
窓を開閉め示して換気しない限り、家の中の空気は全く入れ替わらない状態が続きます。
そうなると結露が起こって、カビや腐敗が発生しやすくなります。
一方、パッシブデザインでは、高気密でも、風の通り道を考慮した設計がなされるので、逆に適度な換気がなされ、ニオイもこもりにくくなります。
地域風を把握している業者を選ぼう
パッシブデザインでは風の力を取り入れますが、風の通り方は地域や場所によって変わります。
また季節や時間帯によっても変わります。
特に愛媛県の「やまじ風」や兵庫県の「六甲おろし」のように、名前がつけられるほど特徴的な風は局地風(地域風)と言われ、生活に大きく影響します。
そのため風の通り道を事前にきちんと調べてくれる業者に依頼し、地域風の通り道を把握した上で、間取りを決め、窓の位置を決めることが大切です。
パッシブデザインを取り入れるなら、まずは窓リフォームから
パッシブデザインでは断熱性を高めることが特徴とお伝えしましたが、断熱性を高めるために大事な要素は次の4つです。
- 外壁
- 屋根
- 床
- 窓
新築のように全面リフォームできるなら4要素すべてに注力できますが、部分リフォームならば注力すべき要素は「窓」です。
窓の断熱性を高める方法
- 家全体の窓の面積を小さくすること
- 窓の材質や構造を見直すこと
窓の面積が小さくなれば室内に入ってくる太陽光が減ってしまいますが、断熱に関して壁と比較すると、窓は圧倒的に熱を通してしまいます。
そのため「窓面積を小さくすること=家全体の断熱性能を向上させること」に繋がります。
では窓面積はどのくらい小さくすれば良いのでしょうか?
窓面積に関しては、日本は縦長の国のため、各地の「採光」と「断熱」のバランスを比較して検討すべきです。
日照時間が比較的長い地域では、窓を大きくして太陽の光を取り込む方が合理的です。
逆に日本海側では、冬は曇っている日が多いので、窓を小さくして熱を逃がさないようにしたほうが省エネになります。
東京の場合は、日照時間はあまり長くありませんし、建物が入り組んでいる場所が多いので、太陽の光を取り込める時間は短いです。
したがって小さめの窓の方が有利だと言えます。
断熱性の高い窓の素材とは
下記のように、窓には様々な役割がありますが、それに対応した様々な種類の窓が販売されています。
- 断熱
- 風を通す、防ぐ
- 光を取り入れる、遮る
- 景色が見えるようにする
- 防犯
- 防虫
- 雨を防ぐ
- プライバシーの保護
窓の材質については、以前はガラス1枚のシングルが普通でしたが、現在はガラスを2枚使っている「ダブルガラス」「ペアガラス」の方が断熱効果が高いため、主流になっています。
また、窓の枠に使われているサッシについてもよく検討する必要があります。
アルミサッシが普及していますが、アルミサッシは非常に熱を伝えやすいので、断熱性能があまり良くありません。
断熱効果が高い素材としては
- 木
- 全部樹脂
- アルミと樹脂の複合
などがあります。
理想は木ですが、木は値段がかなり高くなりますし、窓が大きくなると重たくなってしまいます。
そこでお勧めは全部樹脂タイプのサッシです。
決して安い素材ではありませんが、費用対効果が最も大きく、光熱費に換算した場合、約30年で初期費用を回収することができます。
窓ガラスやサッシの表面結露で悩まされている場合、それは断熱性が低いのが原因です。
室内から外に逃げていく熱の約50%が窓からなので、効果的に断熱性能を高めるためにパッシブデザインを取り入れたいなら、まずは窓リフォームから検討してみてください。
パッシブデザインを検討する場合の業者選びに失敗しないための10の質問事項
上述のように、パッシブデザインは日本ではまだ0.01%の普及率。
パッシブデザイン住宅を手掛けたことがない業者が圧倒的に多いです。
そこでパッシブデザインを熟知し、手掛けた経験のある業者を選ぶことが重要となってきます。
以下10個の質問をしてみると、その業者のパッシブデザインに関する力量を測ることができるので、参考にしてみてください。
- そもそもパッシブデザインを知っているか?
- パッシブデザインの家をどれだけ手掛けたか?
- 省エネ住宅をどれだけ手掛けたか?
- 2020年に義務化される省エネ基準を満たす家をつくれるか?
- リフォーム後の省エネ性能を数値で示せるか?
- 冷暖房負荷について説明できるか?
- 土地と建物をセットで判断しているか?
- 断熱の重要性を理解しているか?
- 気密の重要性を理解しているか?
- 性能をお金に換算できるか?