外壁塗料の色選びの際、「艶あり、艶なし、どちらにしますか?」と聞かれても、どっちがいいのか悩みますよね?
実際、外壁塗装に使われる塗料は、艶の程度により5つのタイプがあり、見た目だけでなく、防汚性や耐久性にも関係してきます。
そこで、この記事では塗料の「艶」についてお伝えします。
外壁塗装における艶あり・艶消しとは
外壁塗装に使われる塗料は5タイプがあります。
- 艶消し(艶なし、マット仕上げ、フラット仕上げ)
- 3分艶
- 5分艶(半艶)
- 7分艶
- 艶あり
外壁の塗料の艶を計測する方法は、60度の角度から100の光を差し込んだときに、正反射して反対側にどれだけの光が届いたかで決まります。
反射した光の強さを数値化したものを「グロス値」もしくは「光沢度」といいます。
艶 | 艶消し | 3分艶 | 5分艶 | 7分艶 | 艶あり |
---|---|---|---|---|---|
光沢度 | 5以下 | 15前後 | 35前後 | 60前後 | 70以上 |
艶があればあるほど表面は鏡のような状態になっているため、ツルツルして汚れが付きにくいです。
塗料によって最初から艶の有無は決まっている
どんな塗料でも自由に艶の程度を決められるのかというと、そうではありません。
なぜならメーカーが製造した段階で、その塗料の艶の有無は既に決まっているからです。
塗装業者が工事当日に艶がある塗り方、艶がない塗り方をするわけではありませんし、僕たちの希望に合わせて艶あり塗料を艶消し塗料に調合したりするわけでもありません。
メーカー側の塗料開発時の考え方で、艶の有無は決められています。
そのため塗料によっては、艶消しにできない塗料もあります。
たとえば「断熱性の高い○○という塗料を使って欲しいのですが、艶は消して欲しい」と僕たち依頼主が希望したとしても、せいぜい5分艶、もしくは3分艶までしか艶を抑えられないという塗料もあるのです。
つまり艶ありにするのか、艶なしにするのかは、最初の塗料決めおよび色決めの段階で考える必要があります。
艶あり塗料・艶調整塗料・艶消し塗料の違い
では具体的にどれを選べば良いのでしょうか?
最終的には好みで決めても良いのですが、艶の程度によって耐久性なども変わってきますので、各々の特徴を比較してみます。
艶あり | 艶調整 | 艶消し | |
---|---|---|---|
見た目 | ・ピカピカで新築のようになる ・サイディングのデザインが強調される ・場合によっては安っぽくみえる ・屋根に艶があると非常にまぶしい場合がある | ・自分好みの光沢に調整できる ・調整できるため選べる塗料が増える ・塗りムラ、艶ムラが出やすいため、腕のある職人さん選びが重要 | ・落ち着いた雰囲気 ・薄いベージュやクリーム色に合う ・周りに溶け込みやすい ・場合によっては地味に感じる |
防汚性 | ・汚れがつきにくい ・ツルツルとした仕上がりで防水性が高まる ・コケ、カビ、藻もつきにくい | 艶消し塗料よりは汚れがつきにくい | ・汚れがつきやすい ・防汚性が強化されたものも出てきた |
耐久性 | ・塗料の性能をそのまま発揮できる ・防汚性が高いため劣化スピードも遅い ・艶自体は2~3年で消える | 塗料の性能が少し落ちる | 種類が少ない |
外壁塗装や屋根塗装を行う第一の目的は「家の保護」です。
この保護に焦点を当てるならば、防汚性も耐久性も優れた「艶あり」塗料を選択すべきです。
光沢度が強い場合はピカピカしすぎて安っぽく見えてしまうこともありますが、控えめの3分艶や5分艶なら高級感が出ます。
また艶自体は2~3年で消えるといわれています。
そのため個人的には、落ち着いた雰囲気が好みだろうとなかろうと、いずれは艶は消えるので、防汚性や耐久性が優れた艶あり塗料を選択し、3分艶や5分艶で光沢度を調整したら良いと思います。
艶調整塗料・艶消し塗料
防汚性や耐久性に関連して「艶調整塗料」や「艶消し塗料」の作られ方についても触れたいと思います。
多くは艶がある塗料に対して艶消し剤を混ぜ込むことで、塗った後に艶が出ないように調整されています。
艶消し剤を混ぜることにより、塗膜の表面が細かい凸凹形状になり、この形状が光を分散反射するため、艶がなくなって見えるという仕組みです。
注意すべき点は、艶消し剤を使用すると、塗料に元々設計されている性能が発揮されないどころか、逆に低下してしまうことが多いことです。
そのままの塗料であれば強度は強いのですが、そこに艶を消すため不必要な添加剤を混ぜているため、全体的に塗料としての完成度が少し落ちてしまうのです。
確かに、日本風邸宅だったり、モルタルの意匠性が高い模様仕上げの外壁だったりする場合は、ピカピカした艶有り塗料は合いませんので、艶消し塗料しか選択がないと思います。
でも、その場合は艶消し剤を添加してつくる塗料ではなく、艶消し塗料として元々設計されているタイプの塗料を使うべきです。
またシリコン系塗料などグレードの高い塗料を選択すべきです。
そうすることで塗料の性能も落ちず、耐久性にも優れた艶消し塗料が完成します。
もともと艶消し塗料なのか、艶有りを消した塗料なのかを確認する方法
艶消し塗料であれば、添加物を混ぜたわけではないので、設計当初の性能を保てます。
そこで塗料に設定されている艶に関して知りたい場合は、塗料メーカーの公式ホームページで確認できますし、塗装業者に質問してみてもいいですね。
逆に、ラジカル塗料として有名なファインニッペパーフェクトベストのように、艶ありしかない塗料も存在します。
艶調整塗料は扱いが難しいので、塗装業者選びが重要
塗りムラ・艶ムラがおきやすい
艶調整塗料は技術力のある職人さんに塗ってもらわないと「塗りムラ」「艶ムラ」が起こってしまいます。
メーカー側でも、艶調整塗料の場合は「試し塗りを行ってください」と記載しているほどです。
艶消し剤がうまく混ざっていなかったり、固まったりしてしまうので、攪拌をよく行いながら塗装をする必要があります。
大きいハンドミキサーのようなものを塗料缶に突っ込んで攪拌していきます。
手作業ではうまく混ざらない事もあるので、機械を使用する業者さんの方が信頼できるといえます。
また塗料が偏りやすいことから、塗る時にも技術が必要になります。
艶が均一にならない場合もあるので、腕のある職人さんにお願いすることが必要ですし、あなた自身も工事確認の際に艶ムラがないか目視確認した方がいいです。
特に刷毛やローラーを使って塗装している場合、塗り継ぎ箇所(境目)を確認してください。
「艶引け」や「かぶり」に注意
塗料が乾燥する前に塗装面に問題が起こると、「艶引け」「かぶり」などの現象が起きます。
- 艶引け:光沢がうまく出ない現象
- かぶり:湿度の影響で塗装面が白くなる現象
湿度の高い季節だったり、寒暖差が激しい地域だったりで、夜露が出るまでに塗料が乾ききらなかった場合におきる現象で、艶調節塗料の場合、この「艶引け」「かぶり」が起こりやすいので注意が必要です。
早く乾かせればこうした現象は起きにくくなりますので、その対策として、東→南→西→北と、塗っていく面の順番にも気を遣う必要があります。
この順序は、早く乾く順番として塗料メーカー推奨の順番です。
東側は太陽の光が午前中しか当たらないため、先に塗るべきということです。
ちなみに「艶引け」「かぶり」は艶調節塗料の攪拌不足でも起こる現象なので、艶を調整していればしているほど、つまり七分艶よりも三分艶の方が起こりやすい現象です。
もちろん高圧洗浄などの下地処理がしっかりできているか、下塗り塗料の性質を理解しているかなど、基本的な事が出来ていることも重要です。
失敗しないために、艶選びの際に塗装業者と確認すべきこと
見本をもらおう!
塗料を決定する前に、必ず塗り板サンプル(見本)を見せてもらってください。
通常はA4サイズの板などに塗って見せてもらえますが、業者によっては、希望すればもっと大きい板に塗って見せてもらえることもあります。
有料となる場合もありますが、かかっても数千円で済みます。
塗り終わった後に後悔しても遅いので、可能であれば、これは必要な出費だと考えるべきです。
なぜなら「イメージしていた色と実際の仕上がりが全然違った」という話はよく聞くからです。
サンプル板が小さければ小さいほど、実際の仕上がりと違って見えます。
また「面積効果」といい、まったく同じ色でも、面積の大小により色の見え方は異なります。
一般的に、広い範囲に塗ったときは艶は無く見えますし、色も薄く明るく見えます。
間違いやすい表現
一般的に「7分艶」と書かれていれば、それは艶有りの塗料から、3分艶を消した状態を指しています。
ただ、これはあくまで一般的な話であって、「7分艶あり」(3分艶消し)にしたかったのに、認識の違いで「7分艶消し」(3分艶あり)に仕上がってしまう場合もありえます。
事前に塗装業者としっかり仕上がりイメージを話し合い、「7分艶というのは70%艶で、30%の艶消しですか?」と、認識に違いがないか確認しておくと安心です。
艶あり塗料・艶消し塗料のまとめ
塗装業者さんにも聞いたのですが、艶あり塗料と艶消し塗料のどちらが良いかは、実際のところ塗装業界の中でも賛否両論あるそうです。
もちろん各家庭の外壁の劣化状況によって適切な塗料は変わってきますので、しっかり塗装業者さんと相談してください。
この時に「艶は好みの問題ですね」としか返答しない塗装業者は避けた方がいいです。
確かに好みで選んで良いのですが、前述のように艶の有無でそれぞれに特徴があります。
そのため「最終的には好みの問題ですが、艶あり塗料だと○○に適していて…」と、具体的にアドバイスをしながら一緒に悩んでくれる塗装業者を選んでいきましょう!